Chapter.0 産業革命


 これは、今からすこし後のラグナロクのお話。
 エピソード12・産業革命によってルーンミドガルツ王国内に科学技術という分野が発生しました。
 シュバルツバルドとの技術協力とゲフェン魔法ギルドで開発された画期的な魔法技術の応用によって、次々と生み出されて行く新たな技術。動力にゲフェニア式魔動機を使った陸上車や空挺機、船舶などが開発される中、最も盛んに行なわれたのは言うまでもなく――武器、兵器の開発でした。この世界で最も求められるものは強大な『敵』を打ち倒すための力、効率よく『敵』を殺す武器なのです。
 新たに与えられた力に、何の疑問も持たずに熱狂する人々。もちろん最初は技術を平和利用しようという人も存在していました。多くの人が愛したこの世界を、戦闘のみに特化した殺伐としたものにしてはいけないと。
 しかし、そうした一部の良識ある声は、次々と発表される管理者達の耳障りの良い公式発表、そしてそれに扇動された人々の声に掻き消されて聞こえなくなり、ついには誰の心にも届くこと消えてしまったのです。ある者は絶望のままに自ら、またある者は管理者の手によって闇へと葬られ、この世界を去って行きました。
 徐々に、しかし確実にずれて行く世界の歯車。それはもう、誰にも止められない所まで来てしまっているのかもしれません。

 そんな暗い話はさて置き。
 産業革命華やかなりし頃、人々の生活にも大きな変化が生じました。革命の時流に乗り大成したもの、流れに乗れずに衰退したもの。時代の流れは貧富の差を大きく広げて行き、人は二つの階級に分けられるようになりました。
 すなわち、資本家階級(ブルジョアジー)と労働者階級(プロレタリアート)。一部にはジェントリと呼ばれる特権階級の者まで出るほどでした。
 上流階級に位置する者の多くのは自らの労力を減らすため、その力を誇示するため、その他色々な思惑の元に労働者を雇い、働かせました。合成用アイテムを収集させたり、モンスターから身を護る壁役としたり。自分の身の回りの世話をさせたり。人々の求めに合わせ、新たな職業が次々と生み出されて行きました。料理人や庭師、執事。そして――メイド。


※ この物語はRagnarok Onlineの妄想二次創作小説です。登場するキャラクターはそれぞれ名前通りの人物をイメージしていますが、さやさやも含めて全て、この物語用にカスタマイズされたフィクションな存在であり、Ragnarok Online上に存在したり同名の日記を書いたりしている人物とは直接関係ありませんのでご注意下さい。


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