メイリスが薬草を手に入れるため、ミドガルドに渡ってから数日が経った頃の話です。 とある国のとある王子が成人を迎え、成人の儀式を行っていました。 その国では、成人の儀式として今まで蓄えた物を貢献している冒険者に配りさらなる国への忠誠を計り、家臣や城下の様子を見、諸国の様子の見聞をひろめる。ということをします。 今、その王子がミドガルドにやってきているという噂がまことしやかに囁かれています。 それと同じ頃のとあるミドガルドから離れた小さな島の王宮。 病に臥せっていたはずのニアリル姫が司祭の前に立っていた。 「司祭様。メイリスは…、メイリスはまだ帰ってこないのですか?」 「姫様!?あなたはまだ病み上がり、出歩くなど何をお考えに―――」 「いいから答えて!メイリスは?」 鬼気迫る表情で司祭に詰め寄るニアリル。その足元はどこかおぼつかない。薬を飲んだとはいえ、まだまだ本調子には程遠いのだ。 「まだ、連絡がありません…」 帰ってきていない。そんな事はわかっていた。では、なぜ連絡の一つもよこさないのだ? 「…私を同じ場所に飛ばして。私があの子を連れ帰ってくるわ!」 「姫様!?あなたはまだご無理が出来る体では無いのですよ?そもそもそんなことを国王さまがお許しになるはずがありません」 いつものようにメチャクチャを言うニアリル姫。思わず苦笑しそうになるが、話の内容はとても承服しかねるものだった。 「いいですよね、お父様?」 くるりと振り向くと唐突に柱に向かって話し掛けるニアリル姫。 「気づいていたか。だが、お前は――」 柱の影から現れたのは国王その人だった。 「私の身体のことは私が一番わかっています!」 「だがのぉ…」 「しかしですね…」 同時に口を開く国王と司祭。 「あーもぅ、まだ言いますか!あ、そうだ。二人の秘密―――ばらしちゃおうかな?」 「なっ!ニアリル!?秘密とは何のことだっ?」 「ひ、姫様、秘密って一体…!?」 思い当たる節でもあるのか、お互い顔を見合わせてあたふたする二人。 してやったりという顔で微笑むニアリル。 「フフーン、さて、何のことでしょうねぇ?」 「し、しかたない…」 「わ、わかりました…」 こうして、ニアリル姫は司祭と国王を ちなみにニアリルは二人の秘密なんてなーんにも知らなかったのでしたとさ。 さてさて、病み上がりの身でミドガルドに渡ったニアリル姫。当然のように道半ばで倒れます。 しかし、一人の心優しい青年に保護され、懸命な看病の甲斐もあり一命を取り留めます。 青年は彼女を近くの宿屋に預けると、再び旅立ってしまいました。 出会ってしまった二人。姫を救う事に命を賭けた一人の騎士。それぞれの思惑を乗せて、この物語は始まります。 |